家を探す夢         


平成4年になると同じ夢を何度も見た。家を探す夢だ。

1日中外で遊んでいる。幼い私は、みんなと楽しく話しをし、公園で走り回っている。
ふと気がつくと、日が落ちかけていた。
「もう帰ろうよ〜〜」と声をかけ、家の方へ歩き出す。

「また明日〜〜」と、蜘蛛の子を散らすように一斉に、それぞれの家へ向かって走り出す。
私は勢いよく角を曲がり「おかあさ〜〜ん!」と玄関へ。
違う!私の家じゃあない!「あれ?おかしいなあ」隣へ行ってみる。違う。
辺りの家の表札を片端から探すが表札が見あたらない。
「筋を間違えたかなあ?」と思い、もう1度公園から帰り直す事にした。


いくら、やりなおしても家が見つからない。
もう陽は落ちかけている。
「アカン!日没までに帰らないと、とんでもない事になる!」
ものすごい緊迫感に襲われ走り回って探す。
いつのまにか、私は大人になっていた。


どんなに探しても見つからない。もう、すでに陽は半分落ちている。
疲れて佇み、うなだれた、その瞬間、私はビックリした。足がない!!
気がつけば私は真っ白な着物を着て、額には白い三角の布が・・・そして・・・
私はフワフワと宙を浮いていた。そう・・・幽霊になっていた。
「そうかあ。幽霊だったんだ。家を探していたから無かったんだ。墓を探さないと!」


辺りの景色は一変し、寂しい野原になった。
今まで住宅地だと思っていたのは間違いで、周りは山に囲まれた寂しい場所。
1本の木があってススキがたくさんある。昔の古い墓がいくつもある。
家々は遠く山裾にあり、ここには荒れた田んぼがあるだけだ。
家の表札だと思っていたものは墓に刻まれた文字だった。
スゴイ勢いで飛び回り探したが、何処にもない。
ますます焦ってきた。
「ああ、もう陽が・・・」
いくら飛び回っても墓もない。この辺りにあるはずなのに・・・


とうとう辺りは、真っ暗になってしまった。
「ああ、もう遅い・・・私は墓に入れない・・・」


起きたら、汗びっしょりだった。

この夢を、全く同じ、この夢を何度も見た。
お墓参りに欠かさず行くようになって、この夢はみなくなった。
実家の母は戦死した自分の叔父が「墓参りに来てくれ」と3日続けて夢に現れ、以後、やはり欠かす事なく陸軍墓地に行っている。
こういう事って実際にあるんだなあと、つくづく思った。


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